洋ラン

〜藩世英の洋ランの世界〜

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ランと共に

生き物としてのラン

美しく、忍耐強く、思慮深く、性格はおっとりして気品と知性にあふれ、他を押しのけてはびこる道でなく昆虫との共存の道を歩み続けている神秘的な植物。人類の英知など及びもつかないものを持っているからこそ多様な花を咲かせているのです。

さて、ランはどのように誕生したのでしょうか。地生ランが先か、着生ランが先か、はたまた岩生ランが最初だったのか・・・・これはあくまでも推測ですが、おっとりした性格のランは地表が大木や草に覆われてしまった後に生まれたのではないでしょうか。

もしも地上に上陸した初期の植物であれば、もっと大きな顔をして地表に根を張り巡らせていたはずで・・・・・多くの着生ランのように急な斜面や大木や苔の中、はては直射日光にさらされた岩肌にひっそりと生育の場を間借りするようなことはなかったはずです。

けれどその性格からすれば地生に始まり・・・・おっとりしていて競争が嫌いなため、着生や岩生への道を歩んだのかもしれません。また、その知性ゆえに種子のメカニズムは昆虫と共生菌との共存でした。このランの高度な知性がランの美しさと多様さになったと思います。

希少な原種:マウンテンプラント Orchid Species

ランは植物ですが、私達人間と同じ生き物でもあることをもう一度考えてみませんか。

現在、希少な山採りの原種はワシントン条約によって取引が禁止されていますが、それ以上に大切なことは、美しさに引かれてコレクトする以上は栽培という観点だけでなく、大切に育て保存する責任もあるということです。

メリクロンについては賛否両論あるでしょうが、自然界では昆虫により行われているものを人の手によって同一種のシブリングされた株がこれからの市場で大量に流通されてゆけば山採りの希少原種の保全にもなると思います。

ランを心から愛するものとして、悠久の年月を生き抜いて花を咲かせ続けてきたランには格別の配慮をしてあげるべきだと思います。希少であるがゆえにマニアとしては手に入れたくなりますし、それがマニアの宿命かもしれません。けれどラン達にも命があり、特異であるがゆえの微少な繁殖力からすれば趣味家の想いがラン達を絶滅へと追いやることだけは避けたいものです。

特にクールタイプの山採り原種については専門分野やそれを得意とする業者や栽培家の方々によってシブリングされて増殖されるように願ってやみません。

美しい花

美しいランの花に限らず、人は時として自分勝手な想いから美しく咲く花をまるで自分が咲かせたと感動し、その美しさは人の為にあると錯覚してしまいます。

そればかりか賞やメダルやリボンの為に無理をして咲かせてしまうこともあります。花は人の為でなく種の生存の為であって、私達ランの愛好者は、その営みを手助けし、その恩恵をこうむるだけなのです。

昆虫を追い払われ受粉の機会を得られないランの心境を思い、一言「ありがとう」と声をかけてあげたならランも気を取り直して来年も花を咲かせてくれるでしょう。

私もランの美しさに心酔する趣味家の一人です。4年前に交通事故で入院する以前は無名の一株であっても大切に育て殺したことはありませんでしたが、事故の為に手入れがゆきとどかず数株を死なせてしまいました。現在も不自由な体ですがランには自分の手入れを忘れても時間と情熱をそそいでいます。

生意気なことを書きましたが、コレクター・・・・マニア・・・・である以前にランの栽培家でありたいと思う毎日です。ご意見ご感想をいただけたらうれしく思います。